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北朝鮮工作船「長漁3705」とは?
日本は国土を海に囲まれた海洋国家なので、当然ながらその治安を守るためには周辺海域における警備活動が非常に重要です。
周辺海域における治安を脅かす最大の要因が北朝鮮などによる「不審船」で、麻薬の密売や日本人の拉致事件などに対する関与が指摘されています。
2001年(平成十三年)12月22日、東シナ海にて海上保安庁の巡視船と北朝鮮工作船が交戦、追跡劇の末に工作船が撃沈されるという、所謂「九州南西海域工作船事件(きゅうしゅうなんせいかいいきこうさくせんじけん)」が発生し、列島を震撼させました。
この時撃沈された工作船が「長漁3705」で、後日この工作船は引き上げられ、東京・お台場の船の科学館にて一般公開が行われました。 当ページでは、その模様をご紹介します。
- 初回公開日:2003年
- 最終更新日:2018年3月
- あくまで私個人が趣味で収集したデータを公開している場です。
- 情報は日々変化しており、内容の正確性の保証はしません。
- 無断転載・改変盗用等は厳禁。 判明した場合は対処します。
「九州南西海域工作船事件」の概要
日本近海における不審船の暗躍に関しては、以前より各方面からの目撃情報などで知られており、1999年(平成十一年)には「能登半島沖不審船事件」が発生。
そして2001年(平成十三年)12月22日に「九州南西海域工作船事件」が発生し、工作船「長漁3705」は巡視船と銃撃戦を交えた末に自爆・沈没しました。
2001年12月22日、九州南西海域における不審船の情報を入手した海上保安庁が巡視船や航空機を現場海域に派遣し、追跡が始まりました。
不審船は海上保安庁による停戦命令を無視し逃走し、警告射撃により火災が発生するものの、やがて鎮火して再び逃走を開始します。
その後、工作船から巡視船に対して自動小銃やロケットランチャーによる攻撃が有った為、正当防衛として不審船に対して攻撃が加えられ、その最中に不審船は自爆・沈没したとされます。
不審船からの攻撃により、巡視船3隻が被弾し、海上保安官3名が負傷したとのことです。
お台場・船の科学館における工作船「長漁3705」の一般公開
事件後の2002年(平成十四年)の6月21日に引き上げが決定され、同年9月11日、沈没してから263日目にして船体の引き上げが完了しました。
この時引き上げられた船体及び各種証拠品は調査官によって分析され、一連の作業が終了した後、2004年2月まで東京お台場にある船の科学館内にて一般公開されました。
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左は工作船が展示されていた、お台場にある船の科学館です。
右は工作船内に搭載されていた小型船です。
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こちらは会場で配布されていたパンフレットです。
事件の概要や工作船の性能、引き上げに至までの流れなどが紹介されています。
北朝鮮工作船の母船「長漁3705」
「北朝鮮の工作船」と一括りにされていますが、実際には「母船」と「小型船」の二種類が有り、 「長漁3705」と呼ばれる方が母船というわけです。
資料によれば、通常時は母船の中に小型船を搭載し、沿岸に近づくと小型船が分離して接岸・上陸する流れのようです。 揚陸艦に搭載された上陸用舟艇みたいな物ですかね。
また、敵から逃走するときには母船のみならず小型船のエンジンも使用するとのこと。
つまり、常に海面に接するような状態で母船に格納すると言う事ですね。
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周囲の人と比べると分かりますが、外洋を航行するだけあって、母船はかなり大きいですね。
だいぶ破損していますが、照明器具などを装着してイカ釣り漁船などに偽装していたようです。
右下の写真にある黄色い棒状の物は、引き上げ作業時に取り付けた補強剤です。
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海上保安庁の巡視船と銃撃戦を繰り広げた後に沈没した「長漁3705」。
引き上げられた船体の至る所に、巡視船から発射された機銃弾の弾痕が見られます。
なんとなく母船の後部と前部に弾痕が集中している気がしますが、前部は威嚇射撃、後部はエンジン停止を狙った射撃が行われたからかもしれません。
巡視船から発泡されたのは12.7mm機銃と20mm機関砲だと思われますが、いずれも船体の鉄板をたやすく貫通しているのが分かります。
工作船は機動力重視(つまり軽量化が命)でしょうから、さすがにこの口径の重火器に対する防弾製は無かったのでしょう。 もちろん、それは巡視船とて同じでしょうが。
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資料によれば、この「長漁3705」に関するスペックは「総トン数44トン」「全長約30m、全幅約4.6m」となっています。
エンジンは1000馬力のロシア製ディーゼルエンジンを4機搭載し、3翼固定ピッチプロペラ4機、最高速度は推定33ノットとのことです。
「長漁3705」の内部
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母船である「長漁3705」の後部には巨大な開口部があり、そこから小型船の出し入れなどを行っていたようです。 船内は大きな格納スペースになっており、さながら強襲揚陸艦の様ですね。
巨大な扉の様子や、銃撃で空いた穴などから光が差し込む様子が分かると思います。
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任務とはいえ、若くして散っていった工作船の隊員達。
彼らを弔うため、日本財団の会長名義で花が添えられていました。
「長漁3705」に搭載されていた小型船
前述の通り、「長漁3705」はあくまで母船であり、沿岸に近づいたら小型船を発進させて上陸します。 母船と一緒に小型船も引き上げられて展示されていました。
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資料によると、この小型船のスペックは「総トン数2.9トン」「全長11.21m・全幅2.5m」。
エンジンはスウェーデン製のガソリン船内外機1機(300馬力 x 3)となっており、推定速度は50ノット(時速93km)と高速です。 母船と同様に漁船に偽装していますね。
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工作船「長漁3705」の恐るべき武装
北朝鮮の工作船は密輸・密入国を行う際の単なる移動・運搬手段ではなく、それ自体に重武装が施されている点が大きな特徴です。 電子装備を除けば巡視船以上かもしれません。
ここでは、工作船の恐るべき武装の数々をご紹介しましょう。
14.5mm対空機銃
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これは母船に搭載されていた14.5mm対空機銃で、普段は船内に格納されて外からは見えません。
左側に射撃手用の椅子と照準機が付いており、台座は360度旋回可能と思われます。
14.5mmと言うとあまり聞き慣れないサイズですが、ロシアでは一般的なサイズで、この機銃は戦車や装甲車にも搭載されています。
ロシアでは23mm・85mm・115mm・130mmなど、西側とは違った口径が採用されており、この違いを調べるのもなかなか面白いですよ。
この機銃、対空用とは言え水平射撃も可能なので、海上保安庁のヘリはもちろん、巡視船などに対しても驚異的な存在です。
AKS-74、82式機関銃
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こちらは旧ソ連製のアサルトライフル「AKS-74」です。
かの有名な「AK-47」の後継として開発された「AK-74」をベースに、銃床を折りたためるように改良されたのが「AKS-74」で、銃の口径は5.45mmです。
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こちらは「82式機関銃」で、ソ連製の「PKM機関銃」を北朝鮮で生産した物のようです。
銃の口径は7.62mmで、軽機関銃は大体これくらいのサイズが一般的です。
無反動砲、対戦車ロケット、携帯型地対空ミサイル
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手前の物は携帯型地対空ミサイルで、旧ソ連製の「SA-16」ないし「SA-18」でNATO名は「イグラ」です。 これらは赤外線誘導の短距離型ミサイルです。
この事件に参加した海上保安庁や自衛隊の航空機には、ミサイル回避用の装置(フレアーなど)が装備されておらず、万一これらの武器が使用されていたら大変な事になっていたと思われます。
(*戦闘機などではなくヘリや哨戒機だったため、防御装置が未装備だったとのこと。)
米軍などの圧倒的な航空戦力に対抗する為、北朝鮮軍では対空兵器の拡充に力を入れており、特に携帯式の地対空ミサイルの配備を進めているようです。
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こちらは旧ソ連製の無反動砲「B-10」で、口径は82mmです。
装甲車両すら撃破するこの兵器、防弾装甲が無いに等しい巡視船にとって大敵です。
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旧ソ連製の携帯型対戦車兵器「RPG-7」で、ブラックホークダウンでもお馴染みですね。
この手の兵器としては大ベストセラーで、世界中の正規軍やゲリラ部隊などで使用されています。
公開された映像では、工作船から巡視船に向かって発射された際の光跡が確認できました。
幸いにも外れましたが、もし命中していたら大破していたかもしれません。
いずれにしても、相手が本気で殺しにきていたという事が分かります。
手榴弾やヘルメットなど
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こちらは手榴弾および、鉄製のヘルメットや弾薬箱です。
この手榴弾は中身が鉄製の破片となっており、爆発時に飛散して人間を殺傷します。
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007も真っ青! 北朝鮮工作員の秘密道具
工作員の装備は銃火器だけでは無く、潜入や破壊工作に使用する各種道具類も色々有ります。
引き上げられた工作船からは、それら装備品の数々が発見されました。
ゴムボート・潜水器具
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工作員が上陸するために使用するゴムボートです。
潜水艦や母船で沿岸まで進入し、そこからゴムボートに乗り換えて上陸するようです。
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こちらは潜入に使用する潜水具やジャケットのようですね。
日本の沿岸には自衛隊や在日米軍の施設、原発などのターゲットが多数点在しますが、有事の際には潜水具を装備した工作員の攻撃に晒される危険性が有ると言われています。
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魚雷のように見えるこの道具、これは「水中スクーター」と呼ばれる物です。
フロッグメンに取っては必須のアイテムでしょうか。
この水中スクーターに掴まる事で、水中を高速で移動する事が可能となります。
魚雷や船舶のよりも遥かに小型ですが、ソナーで探知できるのでしょうか?
無線機や日本国内の地図
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左はラジオでしょうか? 木製の枠に収められていますが、その理由は不明です。
右はシャープ製の小型コンピューターです。
回収された携帯電話(J-Phone)には、日本国内に潜伏している協力者の連絡先が大量に登録されていたそうです。
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アイコム製の無線機と無線受信機です。
右の写真にはヘッドフォンのような物も写っていますね。
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英語-ハングル語の翻訳辞典ですね。
日本といえど英語で書かれた物は多いので、この様な英語辞典も必要なのでしょうか?
右は鹿児島県枕崎市付近の地図です。
つまり、彼ら工作員は枕崎市に上陸・潜伏するつもりだったと言うことでしょう。
枕崎市にターゲットがあるのか、はたまた協力者が潜伏しているのか・・・
いずれにしても枕崎市民にとっては恐ろしい話です。
日本製の食料や金日成主席のバッジ
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左は缶詰や時計類で、いずれも日本製の物が含まれています。
北朝鮮への支援物資は、その大半が軍や工作員へ横流しされているという噂が有ります。
我々が供与した物資が、我々を攻撃する工作員のために使用される・・・何とも皮肉な話です。
右は金日成(キムイルソン)国家主席のバッジです。
彼ら親子の肖像画や写真は、基本的に若い頃の物が使用されているようです。
まあ、若い頃は肌に張りがあって見栄えが良いですからね。
このバッジは北朝鮮国民全員に配布されている様で、もし紛失しよう物なら処罰されるとか。
ちなみに、海外からの観光客がこのキム親子のバッジを購入する事は無理なようです。
別のバッジ等なら購入可能なようですが、将軍様のバッジは国民専用と言う事でしょうか。
工作員の最終手段、恐怖の自爆スイッチ
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重火器も驚異ですが、最も恐ろしいのはこの自爆スイッチです。
旧ソ連や北朝鮮などの軍隊は、基本的に敵に投降する事は許されず、拿捕・臨検されそうになったら自爆するように命じられているとか。
この工作船は当初は逃走を試みつつ激しく反撃してきた訳ですが、巡視船からの攻撃で損傷して逃走が不可能になると、突如自爆して爆沈しました。
もし巡視船が臨検するために節減していた時だったら・・・
海上保安庁や自衛隊の仕事は、文字通り命がけです。
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