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表銀座の最後に待ち受ける難所「東鎌尾根」を歩く
北アルプス・表銀座縦走の二日目、後半戦はいよいよ「東鎌尾根」に入ります。
東鎌尾根は槍ヶ岳から四方に伸びる尾根の一つで、難所が連続する表銀座最大の難所です。
体力的にも技術的にも難易度が高い場所ですが、あくまで「表銀座における最大の難所」という意味で、大キレット程の危険箇所は有りませんので、慎重に歩けば大丈夫です。
梯子場や鎖場が多数有るので、グリップ力の高いグローブやヘルメットの装着をオススメします。
ここを越える事で十分な経験を得ることができ、槍ヶ岳の頂上へ挑む前のウォーミングアップの場としてもってこいのコースです。 初心者も恐れずに頑張りましょう。
展望も素晴らしく、エスケープルートも有るので頑張ってチャレンジしてください。
「東鎌尾根」概要
- コースタイム:3~4時間程度
- 小屋:ヒュッテ西岳、ヒュッテ大槍、槍ヶ岳山荘
- 分岐:水俣乗越分岐、槍沢ルート分岐
- 難所:「窓」の三連梯子と崩壊地、各所の急登、槍ヶ岳直下の岩稜地帯、他
- 初回公開日:2014年
- 最終更新日:2018年3月
- あくまで私個人が趣味で収集したデータを公開している場です。
- 情報は日々変化しており、内容の正確性の保証はしません。
- 無断転載・改変盗用等は厳禁。 判明した場合は対処します。
ヒュッテ西岳直後の急斜面の下りから始まる東鎌尾根
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
遠くに見える槍ヶ岳の手前に伸びる尾根が東鎌尾根で、見るからに険しそうですね。
ヒュッテ西岳を過ぎると、これまでの平坦な稜線歩きから一転して急な下り道となります。
ここから水俣乗越まで二百メートルほど下り、そこから槍ヶ岳まで急登が続きます。
- 暫くは勿体ないくらい下ります。
早速梯子が出現しましたが、これらはまだ小手調べ程度。
東鎌尾根には梯子場が多いですが、これは短く高度感も有りません。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
鉄製の梯子だけで無く、木製の梯子も多数設置されています。
難易度的には変わりませんので慎重に通過しましょう。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
梯子場に加えて鎖場も多数有ります。
東鎌尾根の鎖場はさほど難易度は高くないですが、あくまで油断は禁物です。
ヒュッテ西岳から先はヘルメットを着用しましょう。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
今度の梯子はかなり長く、初心者は緊張するかも知れませんね。 三点支持で慎重に!
このエリアの鎖・梯子は基本的に本体・土台共にかなり頑丈に作られています。
「落ちたら危険」という箇所はたくさん有りますが、「壊れそうで危険」という箇所は有りませんので、無事に下山できるかは利用する人に委ねられていると言えます。
また、梯子の上部が地面より高いところまで伸びているので、梯子に取り付く(または降りる)際に安全に移動出来て助かりますね。
- 設置してある梯子や鎖は皆頑丈なので、後は自分次第です。
東鎌尾根は標高3000m近い場所ですが、コースの周囲には豊かな緑が有ります。
とはいえコースの大半は直射日光に晒されるので、帽子或いはヘルメットを被りましょう。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
この梯子場が要注意で、周囲が断崖絶壁なので慎重に通過してください。
登り切った向こう側も急斜面なので、勢いよく登ると危険です。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
東鎌尾根の途中から左手を見ると、上高地へ至る槍沢ルートが一望できます。
沢沿いに山小屋のような物が見えますが、あんな場所に小屋は無いはずで、槍沢ロッジでも無さそうだと思っていましたが、後でババ平のキャンプ地であると分かりました。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
東鎌尾根は槍ヶ岳周辺のメジャールートなので、コース全体は十分に整備されています。
確かに油断は出来ない場所ですが、各人が安全に配慮して歩けば問題無く突破可能です。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
多くの梯子場・鎖場を通過し、ヒュッテ西岳から一時間ほどで「水俣乗越」へ到着しました。
ここから槍沢ルートへの道が分岐しており、エスケープルートとして利用できます。
看板に有るように、東鎌尾根のまだ半分も来ていません。ベンチで休息して後半戦に備えましょう。
- 東鎌尾根は水俣乗越から先が核心部になります。
槍沢ルートの大曲と表銀座の水俣乗越を結ぶルート
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
この水俣乗越の分岐を曲がると、槍ヶ岳と上高地を結ぶ槍沢ルートへ行くことが出来ます。
悪天候や体調不良時のエスケープルートとして活用できるので覚えておいてください。
今回は槍沢ルートから登った際のレポートをご紹介しましょう。
「大曲」と呼ばれる分岐点から水俣ルートに入ります。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
コース全体は至って普通の登山道で、なんとなく北岳の草すべりにも似ています。
少々傾斜がきついですが、難所は無いのでゆっくり登りましょう。
ただ、登山道と枯れ沢の区別が付きにくい場所が有るので注意してください。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
テンポ良く登ったので50分程で水俣乗越へ到着しました。
東鎌尾根の難所が苦手な場合、ここから槍沢ルートへ降りても良いかもしれません。
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水俣乗越から先は急登の連続
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
槍ヶ岳は大分近づいてきましたが、東鎌尾根の核心部はまだこれからです。
行動食と水分を補給しつつ、ペースを守って頑張りましょう。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
水俣乗越まではひたすら下りましたが、ここからは基本的に登りが続きます。
しかもかなりの急登なので、十分な休息、そして行動食の補給を忘れずに。
この付近には木製の梯子場が多数有りますが、大倉尾根に比べたら楽なもんですよ!
キツイ登りですが、開けた稜線歩きは景色が素晴らしく気分爽快です。
- この付近から先が一番疲れる場所ですが、槍ヶ岳まではあと少し!
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
あれだけ遠かった槍ヶ岳も、気が付いたらもう目の前に有ります。
しかし、その手前に立ちはだかる急登につぐ急登。 最後の一踏ん張りです。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
槍ヶ岳からは四方に尾根が伸びており、現在は東尾根に当たる「東鎌尾根」を歩いています。
前方に聳えるのは北尾根である「北鎌尾根」で、こちらはバリエーションルートです。
一般ルートでは無いので、当然ですが一切整備されておらず、地図にも載っていません。
岩稜に精通した熟達者のみに開かれた高難易度のルートです。
東鎌尾根最大の難所である「窓」の三段梯子と崩壊地
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
連続する木階段を過ぎると、小ピークの様な場所で大きなベンチ(?)を発見。
ベンチなのか資材置き場なのか不明瞭ですが、2年後に来ても健在だったのでベンチなのでしょう。
この先には東鎌尾根の核心部である恐怖の三連梯子が有るので、突入前の休息に好適です。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月・2016年10月頃)
ベンチの先に待ち構えるのが、「窓」と呼ばれる東鎌尾根最大の難所、恐怖の三段梯子。
巨大な崩壊地に設置された三段の梯子は全部で20m程の長さが有り、アルプス有数の梯子場です。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
まずは短い木階段を降り、続いて最初の鉄梯子を下ります。
どちらも短く傾斜も緩いため、小手調べと行った感じで通過できます。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
最初の鉄梯子を通過すると一旦コンクリートの足場が有り、続いて2段目の梯子です。
この梯子場は進むにつれて長さと傾斜が増すのが特徴ですね。
梯子自体は極めて頑丈に創られているので、三点支持を守って慎重に通過しましょう。
梯子の裏側に有る岩が突き出ており、一部で足をかけにくい場所があるので注意してください。
- 梯子の裏に有る岩場は凸凹しているので、手足を置く場所に注意を。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
この梯子場に関しては、個人的に梯子よりも、その直後にある痩せ尾根の方が危険だと思います。
細い上に両側が深く切れ落ちており、特に槍沢側は転落すると助からないと思われます。
特に雨天・強風時には最大限の注意を払って通過してください。
ところで、崩壊地から少し上がった場所に謎の梯子を発見しました。
普通に進むと気が付かない様な場所に、鉄製のしっかりした梯子が有りますが、詳細は不明です。
もちろん一般コースではありませんが、崩壊地の整備作業の為に設置された物でしょうか?
- 梯子よりも危険なのはこの痩せ尾根です。 滑落に注意!
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
三連梯子の直後にも梯子場が有り、今度は登りで通過することになります。
梯子自体は頑丈ですが、周囲が切れ落ちた岩場なので注意してください。
窓の梯子に比べるとパーツが細いのと、途中で角度が変化している点に注意してください。
この二箇所の梯子場が1セットで東鎌尾根最大の難所と言えます。
ヒュッテ大槍の分岐点と、東鎌尾根の最終部分
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
核心部の梯子場を過ぎれば大きな難所は無く、ヒュッテ大槍はもうすぐ。
しかし、東鎌尾根の急登はここからが本番! 本当にキツイです。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
東鎌尾根のこの急登、実にキツイ・・・
大倉尾根や合戦尾根もキツイですが、あれらは体力に余裕が有る序盤に登るのに対し、こちらは疲労が蓄積される表銀座縦走コースの最後にやってきます。
あと、すっかり忘れていましたが、ここは標高3000m近い場所。 空気の薄さも辛さの一因かも知れません。 とにかく一歩ずつ確実に、です。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
気力を振り絞って急登を登り切ると、ついに「ヒュッテ大槍」が見えました。
ここは燕山荘グループの小屋で、豪華な食事が評判です。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
そろそろ昼食の時間なので、ここで大天井ヒュッテのお弁当を頂きます。
栄養に配慮された美味しいおかずと処分が楽なお箸、見事な山岳弁当でした。
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
ヒュッテ大槍の周囲には槍沢ルートへ繋がる分岐が点在し、間違ってそちらへ進んでしまいました。
こちらへ進むと殺生ヒュッテや槍沢ルートに合流します。
本来は東鎌尾根の最後の部分を通って槍ヶ岳山荘へ至る予定だったのですが、「槍ヶ岳」の看板を鵜呑みにしてしまい、良く確認せずに進んでしまいました。
- 間違って槍沢の方へ降りてしまうと悲惨です・・・
*画像クリックで拡大。(撮影:2014年9月頃)
槍ヶ岳へのルートの中では最も簡単でさしたる難所も無い槍沢ルート。
しかし、終盤の急登だけは別で、地獄のような急登が延々と続く、まさに最後の難関です。
道を間違ったため、通らなくても良いはずの急登を登る羽目になってしまいました・・・
道を間違った反省を活かし、再訪した2016年にはしっかりと右手の道を進みます。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
ヒュッテ大槍から先は道が二手に分かれ、左手に進むと殺生ヒュッテの方へ降ります。
東鎌尾根から来たらそちらへ進む意味は無いので、間違えないように右手に進みましょう。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月頃)
ヒュッテ大槍から槍ヶ岳山荘までは東鎌尾根、そして表銀座コースの最後の区間となります。
全体的には穂高の吊尾根の様な雰囲気の場所で、所要時間は登り約50分、下り約30分程度です。
さしたる難所はありませんが、全体が岩稜帯なので落石や滑落には注意しましょう。
数カ所ほど梯子場も有りますが、長さや傾斜は控えめなので特に問題はありません。
- 表銀座最後の区間です。 落石と滑落にご注意を。
*画像クリックで拡大。(撮影:2017年9月頃)
槍ヶ岳がどこから見ても美しい名峰であるという事は、もはや議論するまでも無いでしょう。
そんな槍ヶ岳ですが、個人的には東鎌尾根から見るのが一番美しいと思います。
特にヒュッテ大槍付近から、若干仰ぎ見るようなアングルで見ると最高ですね。 惚れ惚れします。
*画像クリックで拡大。(撮影:2016年10月・2017年9月頃)
槍ヶ岳の足下をすり抜けるように進み、槍沢ルートと合流すると長かった東鎌尾根も終わりです。
上を見上げると天空を突き刺すような槍ヶ岳の勇姿が。 このコースだけの絶景ですね。
後ろを振り返ると、先ほど通過したヒュッテ大槍が確認できます。(白矢印の所)
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