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連続する梯子とロープを登り詰めて花崗岩の頂へ立とう

いよいよ大崩山屈指の人気を誇る「湧塚(わくづか)尾根コース」を紹介するわけだが、そもそも「湧塚」だったり「和久塚」だったりと表記揺れが存在する。
登山道に設置されている案内板においても双方が使われているが、意味する物は一緒なので混乱しないようにしよう。
この湧塚尾根コースは大崩山に複数存在するコースの中でも屈指の人気と難易度の高さを誇っている。
険しい地形は登山者に対して容赦なく牙をむくが、その試練を越えた先に待ち受ける絶景は他では味わえない素晴らしいものばかり。
十分にトレーニングを積み、装備を調えて挑んで欲しい。
大崩山に何度も足を運んだ私が紹介するこのページを熟読すれば、きっと素晴らしい湧塚尾根歩きを体験できるだろう。
大崩山各コースの登山口へのアクセスは、下記ページで詳細を紹介しているので参考にしてください。

祝子川登山口から和久塚尾根への分岐点まで
まずは起点となる祝子川登山口と、大崩山荘及び祝子川徒渉地点までの区間を紹介する。
この区間は「坊主尾根コース」「湧塚尾根コース」「三里河原コース」における共通の区間なので、大崩山を訪れる度に何度となく通ることになるルートだ。
極端な難所は無いが、かといって決して油断出来る様な地形でもない。
地形をしっかり把握し、安全・確実に踏破出来るようにしよう。
祝子川登山口の駐車スペース争奪戦


大崩山には祝子川登山口と宇土内谷登山口という二つの登山口が有るのだが、困った事にどちらも駐車場は無く、基本的に林道の路肩に路駐することになる。
今回は祝子川登山口の場合だが、この付近は林道が広めなので、端に寄せて駐車すれば交通の妨げにはならない。
ただ、大崩山は人気が高く、九州の内外から多くの登山者が訪れる。
特にゴールデンウィークや紅葉の時期のハイシーズンは大変で、早朝から数十台もの車が並び、駐車スペースの確保に難儀する場合が有る。
写真は5月の連休、それも好天の登山日和における午前6時の様子で、既に一杯だ。
前泊している人の車も有る為、早ければ午前4時位で一杯になってしまう。
登山口付近に駐車スペースが無い場合、さらに先に進んで祝子川を越えた辺りに駐車しよう。
ちなみに登山口の近くには緊急自動車の転回場が確保されているのでうっかり駐車しない様に注意。
また、最寄りの民宿からは登山口まで数キロ離れているため、そこから徒歩で移動するのは少々厳しい。送迎サービスの有無を確認しよう。
なお、8月頃は暑すぎるためか意外と空いている場合が多い。
祝子川登山口は穏やかな樹林帯からスタート




大崩山の祝子川登山口(上祝子登山口とも言う)の様子。
湧塚尾根コース、坊主尾根コース、三里河原コースなど、大崩山を代表するコースのほとんどはここがスタート地点となる。
大崩山の入山届は用紙を投函するのではなく、バインダーの中に入っているノートに記入する形式だ。
美人の湯など近隣の民宿等でも入山届けを受け付けているとの情報も有るが、早朝には営業していないので、基本的にはここで記入する事になるだろう。




ほどなくして早速最初の梯子とロープ、そして木橋が出現!
他の山なら難所扱いかもしれないが、大崩山においては小手調に過ぎない。
これから何十箇所もある梯子場・ロープ場の一つに過ぎず、下山する頃には存在すら記憶に残っていないだろう。
綺麗に整備された「大崩山荘」




登山口からはおよそ30分程で「大崩山荘」が見えてくる。
有志によって管理されている無人小屋で綺麗に整備されている。
2階建てで規模も大きく、恐らく30人程度は宿泊可能だろう。
宿泊料金はカンパ制となっており、小屋の中に料金箱が有るので気持ち程度でも是非。
トイレは小屋の裏手に設置されているが、トイレットペーパーは要持参。
大崩山荘に前泊し、早朝から各コースに挑むのも人気のプランだ。
坊主尾根コースへの分岐を見送りつつ三里河原コース方面へ


大崩山荘の目の前は「坊主尾根コース」への分岐点となっている。
湧塚尾根コースから頂上を経て坊主尾根コースを下るのが定番の周回コースなので、ここは旅の最終盤で合流する事になる場所だ。
湧塚尾根コースへ行くためには「三里河原コース」の方へ進もう。
もちろん逆回りで坊主尾根コースから登っても構わない。
その際はここで左に進み、直ぐ先にある祝子川を徒渉することになる。


祝子川徒渉地点までに存在する難所の中で最も注意を要するのがここである。
大きな岩をトラバースするのだが、横は深く切れ落ちている。
しかし、ここですら大崩山においては軽いジャブに過ぎない。サクッと通り過ぎよう。
足下は一部苔むしており、特にステップは切られていないので注意しよう。
見た目は恐ろしい場所だが、この花崗岩は滑りにくいので意外と歩きやすい。
過去、この先の祝子川徒渉地点で重傷者が出た際に、レスキュー隊が通過を断念したというトラバース地点はここの事だと思われる。たしかに担架を担いで通過するのは厳しそうだ。
その患者は最終的に航空救難団のヘリで搬送されたようだ。
二度目の分岐(湧塚尾根分岐)と祝子川の徒渉




トラバース地点を過ぎて暫く進むと、程なくして二度目の分岐点が登場。湧塚尾根コースへ行くには左へ進もう。
最初の分岐は「三里河原」の方へ進んだので、今回もうっかり三里河原の方へ進まないように注意!
湧塚尾根の方へ進むと直ぐに祝子川の徒渉地点に差し掛かる。
ここは巨岩の転がる大きな川の徒渉で、岩伝いに対岸に渡る必要がある。
かつては橋が架かっていたのだが、何度も水害で流出し、現在は再建されていない。
最初にルートファインディング能力が試される場所がここだ。
岩の上の僅かな踏み跡や対岸のケルンなども注意深く観察しよう。
増水する度に地形が変化するので、毎回ルートを見極める必要がある。
祝子川を徒渉し、迷いやすい樹林帯を越えて、急登の待ち受ける湧塚尾根へ


徒渉地点を過ぎると共通区間も終わり、いよいよ湧塚尾根コースへ突入。
待ち受ける難所に緊張が高まるが、恒例の「つっかえ棒」を発見して思わずニヤリ。
このギミックってどの山に行っても見かけるような・・・ 発案者は誰だろう?
この付近はたまにロープ場が有るが、難易度は低く問題無く通過出来る。
それよりも迷いやすい地形の方が問題だ。
祝子川の徒渉後、しばらく小さな沢沿いを歩くのだが、この付近は特に迷いやすい。
間違った踏み跡も多く、それが次なる道迷いを生む・・・負の連鎖ですな。
途中で何度か徒渉するのがポイント。 道が消えたなら対岸に続いているかもしれない。
踏み跡だけを辿るとルートミスの危険が有るので、確実な目印であるテープを探そう。
大崩山ではピンクのテープが多いが、他の色も有る。 慎重に周囲を観察しよう。
暫く沢沿いを歩いて、左からも小さな沢が出てきたら、その間にある岩尾根っぽい所に登っていこう。
それ以降は沢は姿を消し、本格的な急登が始まる。


この樹林帯のハイライトは、この巨大な岩の割れ目を通過する場所である。
元から割れていたのか、道を造るために割ったのかは不明だが、ここを通過する。
一見凄く狭い様に見えるが、ザックを背負った成人男性でも問題なく通過可能だ。
なお、この大岩の前を直進すると小積谷のクライミングルートへ至るらしい。
ちなみにこの岩の隙間は別名「メタボチェッカー」と言われているとか?


「メタボチェッカー」を過ぎるとコースは大きく向きを変える。
この先から本格的な急登となるので、焦らずゆっくりと登っていこう。


湧塚尾根コースで最初の梯子場が登場!
元々は1本の梯子だったはずだが、現在では途中で切断されて二段梯子の様な形状になっている。




大部分が急登である湧塚尾根だが、この付近が一番きついかもしれない。
勾配もきついのだが、樹林帯なので蒸し暑いのも問題。 特に盛夏はサウナ地獄と言える暑さだ。
梯子やロープで登る方がまだ楽な気がする。純粋な急勾配は辛い。
テープは基本的にピンクの物が使われている。常に次のテープを確認する癖を付けよう。


このルートは目印が乏しく迷いやすい箇所が多い。
袖ダキがほど近くなった頃、途中で左上の方に開けていて踏み跡も多く、いかにもコースっぽく見える箇所が有る。
ここは坊主尾根コース方面の展望が得られ、さらに上の方へコースが続いている様にも見えるが、実際は単なる展望所に過ぎない。
実際のコースは正面方向に続いているのだが、左方向に比べると地形が荒く、踏み跡も分かりにくいという困った場所である。




2022年頃の台風で大崩山にも土石流が発生するなどの多くの被害が出た。
湧塚尾根コースにおいては袖ダキ分岐の手前付近で大崩落が発生し、かつての地形は一変している。
現在はロープが整備されているが、傾斜が大きい上に浮石も多いので、石を落とさないように細心の注意を払って通過しよう。
袖ダキ展望所への分岐点は間違えやすいので注意しよう




久しぶりに出現したこの分岐点は「袖ダキ」への分岐だ。
直進すれば頂上への最短ルートだが、多くの展望所を迂回してしまう上に、利用する人が少なく多少荒れている模様だ。
左折すれば最初の展望所である袖ダキへ至る。
多少急登はあるものの、距離は長くないので頑張ろう。
この付近はアケボノツツジが多いので、急登のご褒美として堪能していこう。
この分岐は「山と高原地図」など一部の地図に記載されていない。
下調べをしていないと「袖ダキ」が何なのかが分からないし、「頂上」という言葉につられて直進してしまう可能性が有る。
■袖ダキは大崩山屈指の展望所なので絶対に立ち寄って欲しい!
■袖ダキから頂上方面へ進むルートが有るので、この分岐に戻って来る必要は無い。
大崩山有数の名所「袖ダキ」からの絶景を楽しもう


分岐から五分程度で「袖ダキ」に到着。
ここは大崩山における最初の絶景ポイントで、いきなり強烈な風景!
小積谷を挟んで目の前に聳えているのは「小積ダキ」で、見えている部分だけでも約300mもの高さがある。
北アルプスの屏風岩を彷彿とさせる巨大な花崗岩だ。
目の前に聳える小積ダキにもこれから登る事になる。
小積ダキからは今度はこの袖ダキを眺める事になる訳で、見比べて見るも面白い。




小積ダキの反対側に聳えるのが、これも大崩山名物の「湧塚(わくづか)」群である。
手前から順に「下湧塚」「中湧塚」「上湧塚」で、いずれも登頂可能!
この様に小積ダキと湧塚群は谷を挟んで向かい合っており、それぞれの展望所から全体を眺めることが出来る。
これらの巨岩群が大崩山最大の見所と言えるだろう。
他の山ならば最終目的地レベルの大絶景であるが、大崩山にとってはここですら数ある絶景の一つに過ぎない。まさに大崩山は他とはスケールが違うのだ。
なお、「わくづか」には「湧塚」と「和久塚」の二通りの書き方が有り、地図には主に前者が、山中の看板には両者が使用されている。
大崩山の展望所はいずれも断崖絶壁になっており、滑落したらまず助からない。
くれぐれも端には近寄らないようにしよう。悪天候時も要注意。




思わず息をのむ程に超巨大な小積ダキ。 大崩山における最大の目玉と言える巨岩だ。
ちなみに、この小積ダキの上には坊主尾根のルートが有り、後ほどそこを通る事になる。
「あんな所ホントに通れるの!?」と思ってしまう様な場所にルートが有るのが大崩山なのだ。

小積ダキの左の方に見える小ぶりな岩(これでも十分巨大だが)は「坊主岩(米岩)」と呼ばれる物で、これは下りに利用する事になる坊主尾根コース上に存在する。
さすがに登頂はできないが、巨大で特徴的なその姿は大崩山のランドマークの一つとなっている。
この岩の名称は「米岩」「坊主岩」とする資料があり、どちらが正しいのかは不明だ。
外見は米に見えるし、一方で坊主尾根コース上に存在する事から坊主岩という説にも説得力が有る。
他の山だったら既にお腹いっぱいになる位の絶景を楽しんだわけだが、大崩山の見せ場はまだまだこれから始まる。期待して先へ進もう。
梯子とロープにトラバースが連続する湧塚尾根の厳しい急登




袖ダキから先へ進むと、待ち受けるかのように梯子やロープが次々に出現!
注意を要する場所だが、一気に高度を稼げるという点では楽とも言える。
梯子に混じって左の写真の様に、自然の根っこを利用した狭い足場も存在する。
多数存在する梯子の中にはグラつく物も有るので注意して通過しよう。
下湧塚・中湧塚・上湧塚の間にはそれぞれ急登が有るので、体力配分に留意しよう。
下湧塚の手前に有る分岐点と五連梯子


「下湧塚(下和久塚)」の直前にあるこの分岐点が、湧塚尾根コースにおける前半戦最大のポイントだ。
案内板には「下和久塚」「大崩山頂」と有り、山頂方面に向かうと湧塚群を迂回する最短ルートに進む。
袖ダキ手前の分岐点と同様に、山頂方面は確かに最短ルートだが、大崩山屈指の展望所を見逃す事になってしまう。
これらの展望所に行かなければ湧塚尾根コースを登る意味が無いと言っても過言ではないので、ここは左へ進もう。
「頂上」という文字に誘われて直進しないように注意しよう。
下湧塚から中湧塚・上湧塚を経由して頂上へ行くことが出来るので安心して欲しい。




ここはほぼ垂直の断崖絶壁を連続する梯子で登っていく豪快な場所である。
高低差は相当あるはずだが、周囲には木が生い茂っているため、さほど高度感を感じず登る事が出来る。
梯子自体は頑丈な物だが、途中にある足場は狭いので要注意。滑落したら無事では済まないだろう。
怖い場所だが一気に標高を稼げるので嬉しいのも事実。
梯子を登り切ったら岩の上のロープ場を右へ進んでいくと下湧塚に到着する。
下湧塚からの息を呑む絶景




五連梯子とロープ群を越え、ようやく下湧塚の上に到着!
袖ダキでは見上げる様な位置にあった小積ダキがほぼ同じ高さに見える位に登ってきた事がわかる。
眺めは大変素晴らしいのだが、滑落したら一巻の終わりなのでくれぐれも慎重に。


中湧塚の方を見ると絶妙なバランスで積み上がった奇岩群が見えるが、中でもこの岩は興味深い。
平らな面がイージス艦に搭載されているレーダーパネルになんとなく似ているため、個人的には「フェーズドアレイ岩」と勝手に命名しているのだが、どうでも良い話ですな。
全世界で私しか使用していない名称なので注意だ!
台風被害で変化した中湧塚付近のコース状況


2022年の台風では中湧塚付近のコースも被害を受けた様だ。
このロープ場は以前は中湧塚の後に通過する場所だったのだが、現在では中湧塚に行く前に通過する様な位置関係に変化している。
現在、コース途中で左に分岐してこのロープ場を経由して中湧塚に行く事になる。
中湧塚から先は行き止まりになっており、上湧塚方面に行くには、前述の分岐に戻り、そこから改めて先へすすむ形になっている。
2025年春現在の状況なので、今後コースが変化する可能性が有る。
中湧塚からの展望




以前は下湧塚から中湧塚は10分程度と割と近かったのだが、現在はコースが付け替えられ、さらに一部不明瞭な箇所も有る関係で多少時間が掛かるようになった。
岩の上によじ登ると更なる絶景が楽しめるが、かつて存在したロープは現在は無くなっている。
中湧塚からの展望を楽しむには岩の上によじ登る必要がある。
高い場所に登りすぎると降りる際に怖いし、奥に行き過ぎて滑落しないように注意しよう。

中湧塚からは「りんどうの丘」と呼ばれる場所が正面に見える。
ここは湧塚尾根コースと坊主尾根コースの中間に有る展望所で、ここで昼食を取る様な行程を組むと良いだろう。


中湧塚の展望所からは、西の方角に次なる目的地である上湧塚が見える。
上湧塚には隠れ展望所の様な場所があり、展望を楽しんでいる人姿が確認できた。




トラバースを過ぎると、息つく暇も無く梯子やロープが次々に登場。
せっかく登ってきたのに、勿体ないくらい下ってしまうこの悲しさ・・・
特にスラブのロープ場は凹凸が全く無いので注意が必要だ。
岩自体は意外に滑りにくいので、岩に対して体が直角になるような姿勢を取ると安定する。




大崩山の名所の一つ「思案橋」に到着。
かつては丸太橋がかかっており、あまりの危険さに進むかどうか思案したのが名前の由来だそうだ。
現在では頑丈な鉄製の橋が架けられているが、下は切れ落ちている上に結構揺れる。
ひとりずつ慎重に通過しよう。

思案橋を過ぎると、程なくして下湧塚手前からの直登ルートと合流する。
これらの分岐点も大半の地図には記載されていないので注意しよう。
直登ルートを進んだ場合、下和久塚と中和久塚の絶景は見られないが、体力や時間を大幅に節約する事が可能だ。
エスケープルートとしても覚えておくと良いだろう。
湧塚尾根コース最期の展望所「上湧塚」へ登ろう
直登ルートと合流した後(上湧塚直下付近)はかなりの急登になっている。
疲れた体にこたえる急登だが、それ以上にコースが荒れて道が不明瞭な点に注意して欲しい。
この付近は台風の影響でコースが荒れている上にテープが少なく分かりにくい。
迷った踏み跡がそこかしこに有るので注意して欲しい。


分岐点から先の急登を乗り越えると、傾斜の緩やかな開けた場所に到着。
ここは上湧塚の直下に位置し、春には満開のアケボノツツジが出迎えてくれる。
上湧塚に登る人の多くはこの広場に荷物をデポして空身で登る。
開けた場所で有り、時間的にも昼食の場所としてうってつけだろう。
時間や体力に余裕が無い場合、上湧塚は飛ばしてもOKだ。


上湧塚の周辺は少々ややこしいので簡単な地図を作ってみた。参考にして欲しい。
下湧塚や中湧塚はルート上に存在しており(迂回ルートを通らない場合)、登山道を進めば自然に辿り着いたが、上湧塚はルートから外れた場所に有る。
そのまま進むと上湧塚を通り過ぎて頂上方面へ行ってしまうので、上湧塚に登る場合は一旦登山道から外れる事になる。
あまりにも危険過ぎたためか、現在では直登ルートのロープなどは撤去されている。
狭い岩の隙間を垂直によじ登る凄まじいルートだった。




ある程度進むと上湧塚の基部をトラバースする場所に出る。
中湧塚の直後に有ったトラバースを少し縮小したような感じだろうか。
かつてはたるんだロープが設置してあり、個人的にはかなり恐怖を感じた場所だった。
現在では頑丈な鎖に置き換えられている。整備してくれた人達に感謝!
そこを過ぎるとほぼ反対後方へ折り返し、今度は45度近い急角度の岩場をロープで登る。
グリップは効くので慎重に登ろう。




このアングルから上湧塚を見ると、綺麗な三角形をしている事が分かる。
それにしても登頂ルートの凄まじい地形と角度が恐ろしい。
難所は離れた場所から見た時の方が、その恐ろしさがよく分かる気がする。




いよいよ上湧塚の頂上までやってきた訳だが、苦労に見合う素晴らしい展望!
左手前が先ほど登った中湧塚、右奥に聳える巨岩が小積ダキである。
中湧塚には多くの登山者の姿が見えるが、外から見ると実に恐ろしい場所だ。
「転落したら一巻の終わり」という言葉が誇張では無い事がよく分かると思う。


小積ダキの手前に見えるのは中湧塚からも見えた「リンドウの丘」と呼ばれる展望所。
湧塚群が一望できる展望の素晴らしい場所で、昼食休憩に好適である。




上湧塚の周囲には手つかずの原生林が果てしなく広がっており、豊かな自然に思わず感動する事だろう。




原生林の中にひときわ目立つ巨岩。 これが大崩山名物「七日廻り岩」である。
まるでモアイやスフィンクスといった古代文明の遺物の様にも見るが、れっきとした自然物だ。
「岩を一回りするのに七日間かかる」というのがその由来で、読み方には「なのかまわり」「なぬかまわり」など諸説がある。
「七日廻り岩」が見えるのは上湧塚の上部からだけである。
モチダ谷コースからは七日廻り岩の基部へ行くことが可能だ。



上湧塚の基部にある広場の方向へ行くと、かつて存在した直登ルートの痕跡を発見。
ロープが撤去された理由は不明だが、やはり危険過ぎたからではないだろうか。
なお、この反対側の方へ行って茂みを抜けた先には展望所があり、中湧塚方面の展望が素晴らしい。
ただし、足下が切れ落ちているのでくれぐれも滑落には注意しよう。
疲れた体に堪える大崩山頂上への道


上和久塚を過ぎ、リンドウの丘への分岐を左に見つつ先に進むと頂上への道に入る。
ここから頂上までは断崖絶壁の様な難所は全く無いが、暫く急勾配が続く。
湧塚尾根コースの急登で疲れ果てた体には相当堪えるかも知れない。
難所は全く無く所要時間も50分程度なので、慌てずゆっくり行こう。
この区間の為にストックを持ってくるのもオススメだ。
上湧塚から少し行った先で「モチダ谷コース(七日廻り岩経由ルート)」が合流しているのだが、目印が無い上に踏み跡も不明瞭なので、存在を知らないと全く気が付かないと思われる。




リンドウの丘分岐から10分程で坊主尾根分岐に到着。
帰りはこの分岐を左方面に進んで下山するが、リンドウの丘経由でもOKだ。
坊主尾根分岐を過ぎると傾斜も弱まり、後は頂上まで穏やかな歩きとなる。
いかにも九州山地の稜線歩きといった雰囲気の気持ちの良い道が続いている。
かつて大崩山の頂上付近は熊笹が生い茂っていたが、現在ではそれらは姿を消して程良い展望が広がっている。
気候の変化やシカの食害などが原因だろうか?


さらに進むと、今度は「上鹿川登山口(宇土内谷コース)」の分岐が出現。
このコースは最短で登頂出来て難所も無い、初心者でも安心して登れるルートだ。
しかし、登山口から市街地までが非常に長いのでエスケープルートには向いていない。
基本的に宇土内谷コースはピストン登山以外では利用しない方が良いだろう。
この他にも、モチダ谷コースから登ってくるルートが合流するはずなのだが、看板が無く、踏み跡らしき物も見当らないので確認できなかった。
大崩山にはルートが多数有るが、整備が行き届いていないルートも多いので注意が必要だ。
祖母・阿蘇方面の好展望が楽しめる大崩山頂上と石塚広場




そろそろ大崩山の頂上に着こうかという頃、展望が開けた広場のような場所に到着。
ここは「石塚展望所」で、ここから頂上までは5分程度の距離である。
祖母・傾山方面を初めとした展望が素晴らしく、テーブル代わりの岩も有るので休息に好適だ。
頂上が混んでいる場合など、ここで食事を取るのも良いだろう。




石塚展望所からは九州内の多くの名峰が一望できる。
近くには傾山や祖母山、遠くには九重連山や阿蘇山、遙か西の山は普賢岳だろうか?


こちらは宇土内谷コース方面の展望で、手前の尾根の上にコースが有る。
宇土内谷コースは全く別の登山口から登るコースなので、間違っても迷い込まないようにしよう。



石塚展望所からのんびり5分も歩くと、いよいよ大崩山頂上へ到着。
かつては笹藪が生い茂り「ガッカリ山頂」と呼ばれる事も有ったが、現在ではかなり展望が開けており、なかなかの景色が楽しめる。
なお、頂上から先は「二枚ダキコース」と「鹿川越コース」への道が続いている。(右写真)
これらのルートは一見頂上への最短ルートの様に見えて魅力的なのだが、実際は熟達者向けの難ルートなので注意。
どちらのルートもマイナールートであり、実質的に廃コースに等しい状況である。
情報も極端に少ない為、基本的には立ち入らない方が無難だろう。
大崩山「湧塚尾根コース」まとめ
この様に、大崩山「湧塚尾根コース」は数多くの急登と危険地帯が存在する高難易度のコースである。
梯子場やロープ場に加え、断崖絶壁を通過するトラバース地点も多い。
また、コースが不明瞭な場所も点在し、正確なルートファインディング能力が求められる。
足だけで無く全身を使った総合的な登山技術が求められる、歯応えのあるコースだ。
難易度の高いコースであるため、登山初心や大崩山未経験者は注意して欲しい。
ソロ登山は避け、なるべく大崩山の経験者と一緒に登ろう。
一方、その難所を乗り越えた先には息を呑むような絶景が待っており、大崩山を代表する風景の多くも湧塚尾根コース上に存在する。
苦労してでも登る価値があるのは間違い無い。
厳しいコースではあるが、登ってみれば湧塚尾根コースが高い人気を持つ理由がよく分かる。
まさに大崩山を代表する名コースと言えるだろう。
しっかりと準備を整え、万全の態勢で挑んで欲しい!
■難易度は高いが、それに見合う素晴らしい風景を楽しめる名コースが「湧塚尾根コース」だ。
■体力だけでなく、腕力や観察力など総合的な登山能力が求められる。
■一般的に6~8時間の行程となるため、早出・早着を心がけよう。
■ヘルメットやグローブは必須。ストックは終盤の急登においては役立つだろう。
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