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登るよりも辛い? 梯子&ロープ地獄の大崩山・坊主尾根を下る

大崩山における一番人気の定番のコースは「湧塚尾根コースを登り、坊主尾根コースを下る」というもの。
当サイトにおける大崩山攻略情報も上記反時計回りプランで紹介している。
既に湧塚尾根コースや頂上は紹介したので、今回はいよいよ坊主尾根コースに突入!
このコースには梯子やロープが数え切れない程設置してあり、おまけに危険なトラバース地点も有るなど、大崩山に数あるコースの中でも最難関コースと言える。
「下りは下りならではの大変さがある」というのは登山経験者ならご存じの通り。
この坊主尾根は危険な下降場所が多すぎる為、むしろ登るよりも辛いかもしない。
梯子場やロープ場は上半身もフル稼働するので、坊主尾根を歩く場合には腕力も鍛えておこう。
下りで使っても大変だが、当然ながら登りで使っても大変なコースだ。
急登と難所の連続で、北ア三大急登などよりも遥かにきついコースだと思う。
上湧塚の直後に有る分岐点からリンドウの丘方面へ



上湧塚基部の広場を出発すると、程なくして「リンドウの丘」への分岐点に到着。
大まかなルート構造は右のマップを見て欲しい。
このページで紹介しているのはオレンジ色の部分で、リンドウの丘を経由して坊主尾根コースへ向かう。
湧塚尾根コースから来た場合、頂上もリンドウの丘も展望に優れるので両方行きたいところだが、その場合は時間や体力と相談しよう。
頂上→リンドウの丘→坊主尾根コースと進む場合、かなりの遠回りになってしまう。
厳しいようならリンドウの丘をパスして直接坊主尾根コースへ向かおう。


分岐を「リンドウの丘」方面へ進むと、程なくしてビバークに適した大きな岩屋が現れる。
悪天候時には待避所として役立つだろう。
この岩屋を過ぎた後、コースは基本的にほぼ水平方向へ進む。
間違って大きく下っていかないように注意。(迷い込んだ踏み跡が有る。)
湧塚(和久塚)の絶景も楽しめる、休息に適したリンドウの丘




分岐点から10分程度で「リンドウの丘」に到着。
「リンドウ」という名の通り、季節が合えば美しいリンドウを堪能できる。
展望も素晴らしいので、後半戦の坊主尾根に備えて休息しておこう。
15時までに下山する為には、リンドウの丘には正午頃までには到着したい。


リンドウの丘からは湧塚群が一望でき、その展望はまさに絶景の一言!
つい先ほどまで自分が居た場所を眺められる・・・これも大崩山の楽しみ方の一つだ。


谷を挟んで反対側にある湧塚群。 よく見ると岩の上に登山者の姿を発見。
あんな恐ろしい場所に自分も居たという事実。 凄いというか怖いというか、とにかく絶景だ。
先ほどまで自分が居た場所の恐ろしさに震えてくるが、このリンドウの丘も断崖絶壁に位置するので滑落しないように気をつけよう。
唯一の水場が地形の変化で難所に


リンドウの丘から五分ほど進むと、この付近で唯一の水場が有る。
リンドウの丘で野営する場合はここで給水しよう。
コースはこの水場を経由して先へ続いている。
かつては特に何でも無い場所だったのだが、現在は増水した際に地面が流出したらしく、そのまま通過するには非常に危険な地形になってしまった。
地形的に向こう側へ飛び移らないと足が届かないのだが、狭い上に濡れており、下は急斜面になっているのでかなり恐ろしい。
飛び移った際にバランスを崩したらかなりの高さを滑落し、大怪我は免れないと思われる。
少し手前からやや上を迂回する踏み跡が有るのだが、こちらはこちらで不安定かつ狭い足場で恐ろしい。
通れなくはないが、やはり滑落時のリスクが大きく、安心して通過出来るルートとは言えない。
暫く地形とにらめっこをした結果、結局リンドウの丘の近くまで戻り、そこから大きく上を巻いて通過し、沢を徒渉した直後に沢筋に沿って下に降りてコースに合流した。
多少遠回りにはなったが、こちらの方が遥かに安全だと思われる。
今後何らかの迂回路が作られない場合、正直通りたくないルートとなってしまった。
個人的に坊主尾根の核心部より怖かった。




リンドウの丘から10分程度で、山頂と坊主尾根の分岐点に到着する。
分岐点から坊主尾根方面へ進むと、道沿いに有る名も無き展望所に到着。
下湧塚がほぼ正面・同高度に見える素晴らしい眺めだ。
地形や展望などからすると、展望所はおそらく小積ダキの上部辺りだろうか。
真下は断崖絶壁で、転落したら絶対助からない。 くれぐれも端には行かない様にしよう。
湧塚群の景色はまさに絶景だが、自分がさっきまであの上に居たという事実が凄い!
坊主尾根への分岐点から小積ダキ方面へ


湧塚尾根方面の展望所を過ぎると、やがて「小積ダキ」と坊主尾根主要ルートの分岐点に到着する。
この分岐点は少々分かりにくく、それぞれの進行方向もやや不明瞭なので注意しよう。
小積ダキは坊主尾根屈指の展望所なので、時間に余裕が有れば立ち寄っておこう。




谷の反対側に有る「袖ダキ」や「乳房岩」などの上に人が見える。
乳房岩は良い展望所だが、袖ダキ通過後に少し戻る必要があり、少々位置が分かりにくい。
坊主尾根コースの最難関「像岩トラバース」地点


坊主尾根における最大の難所&名所と言えるのが「象岩」だ。
スラブ状の巨岩のトラバースで、なる程確かに象のような姿をしている。
大崩山に点在するトラバース地点の親玉とも言える場所で、この下は100m以上も切れ落ちており、万が一滑落したら絶対に助からないだろう。
私は大キレットやカニのタテバイ・ヨコバイも経験したが、個人的にはこの像岩トラバースの方が怖い。




登山道を切り開く場合、入念な調査を行った上で好適な場所を決めると思われる。
そう、このただの断崖絶壁にしか見えない場所が「好適な場所」という訳だ!
偶然出来た岩棚の様なこの場所。これが坊主尾根コースの名所「像岩トラバース」である。


足下は少なくとも100m以上は切れ落ちており、どう考えても滑落は死に直結すると思われる。
恐ろしすぎる場所だが、岩の表面は滑りにくく、頑丈なワイヤーも設置されている。
勇気を振り絞って突撃だ!


小積ダキから縦走路に戻り、少し進むと数カ所のスラブのロープ場が有る。
他の山ならば結構な難所だろうが、ここ大崩山においては「その他大勢」の一つに過ぎない。
主役である像岩トラバースの前座みたいな物だ。 サクッとクリアしよう。
小積ダキから先は難所が多すぎてストックを使う余地は無い。
事故の原因にもなりかねないので、ストックは必ずザックに収納しよう。
像岩トラバースの直前にもロープ場が有るのだが、こちらは途中でロープの種類が切り替わるという地味にいやらしい場所となっている。
突然ロープの感触が変化しても驚かないようにしよう。




ロープ場を下り、狭い岩棚の様な通路を10m程進むといよいよ坊主尾根コース最大の難所&名所である「像岩トラバース」に到着!
場所が場所だけに1人ずつ通過する事になるので、シーズン中の祝祭日などはご覧のように渋滞が起きる場合も。
ワイヤーなどの破損や不意に揺さぶられる事による滑落を防ぐ為、こういった場所では1人ずつ通過するのが鉄則だ。


この像岩トラバースの中でも特に注意を要するのは概ね中央辺りの部分。
ここは壁が低くオーバーハングしており、そのままだと頭がつっかえて通過出来ない。
体を外に傾けるか、足の置き場を斜面側ギリギリにする必要がある。
どちらもなかなか恐ろしくて躊躇するかもしれないが、体を伸ばすような感じにすると動きやすい。
なお、ここを通過する際、片手でワイヤーを握って正面を向いて歩く人を見かける。
足場が傾斜している上にとても狭く、両足をクロスして歩くと引っかけた際に危険だ。
また、万が一バランスを崩した際に、片手では体を支えるのは無理だろう。
体を横向きにして、両手でワイヤーを握ったカニ歩き状態で通過した方が安全だと思われる。
さらにハーネスで確保するとなお安全だろう。
剱岳のカニのヨコバイを通過する時と同様に、横向きでGO!
何度も言うが、滑落したら絶対に助からない。 くれぐれも慎重に通過しよう。
間違っても足下(崖の下)を見ないように。 落ち着いて渡れば一分も掛からずに渡りきれるだろう。
真冬にはこの付近は凍結する場合が有る。 アイゼンやハーネスを装備したとしても危険だ。




象岩トラバースの周囲は小積ダキの展望所となっており、絶壁を観察するのに好適だ。
あまりにも巨大すぎる花崗岩だが、自然の力強さや美しさに圧倒されてしまう。
そして、つい先ほどまであの上に立っていた事実がにわかには信じられない程だ。
坊主尾根コースの真骨頂「梯子&ロープ地獄」




梯子、ロープ、そしてまた梯子・・・ 時には梯子とロープの組み合わせも。
冗談抜きで数え切れない程の梯子とロープの連続。 これが坊主尾根だ。
一気に高度を稼げるのは嬉しい反面、慎重さが求められるので非常に疲れてしまう。
ここまで梯子・ロープが多いコースは他には無いかもしれない。




難所だらけの坊主尾根コースにおいて、特に特徴的かつ危険な場所がこちら。
なんと巨大な岩の上がコースになっており、最後はロープ・梯子・ロープと移りながら、ほぼ垂直の岩肌を降りる事になる。


ロープから梯子に移る際は後ろ向きに降りるのだが、ただでさえ足下が見えないのに加え、梯子が岩肌に密着している関係でつま先を差し込む隙間がほとんど無い。
靴を斜め向きにすると多少マシになる。 慌てず慎重に降りよう。


巨大な岩の隙間を抜けたり、湧塚尾根コースの思案橋の様な場所を渡ったり等、相変わらず坊主尾根コースは「イベント」が目白押しで一息つく暇が無い。
これといった休息場所が無いので黙々と下ってしまいがちだが、そろそろ足腰が疲労で悲鳴を上げる頃なので、事故を防ぐ目的も込めて時々休憩しよう。
あまりにも多彩&多すぎる坊主尾根コースの梯子






「一体何度目の梯子なのか?」
もはやカウントすらしていないが、それくらいに梯子(ついでにロープも)が多い。多すぎる。
梯子&ロープの数でいうと国内屈指かも知れない。
梯子の種類や設置方法も多彩であり、中には複数の梯子を合体させた物や、ロープなどと組み合わせた物も有る。
まさに梯子のオンパレード状態で、まるでアスレチック公園にでも来ているような気分になる。
梯子の数も凄いのだが、どうやってこれを現地まで運び込んで設置したのかも気になる。
ヘリで搬入した場所もあるだろうが、人力で運び込んだ場所もありそうだ。
登山道を整備してくれた方々に感謝!
ついに付け替えられた坊主尾根コース屈指の難所




坊主尾根コースを2/3程下ってきた場所にあるこの梯子場。
個人的には坊主尾根コース屈指の難所と言っても過言では無い危険地帯だった。
上記写真は2015年頃のもので、巨大な岩の絶壁を
「梯子 ➔ 梯子 ➔ ロープ ➔ 足場の水平移動 ➔ 最後の梯子」
といった具合に次々に渡り歩く、実に危険な難所だった。
最後の梯子は倒木の根っこに括り付けられていて不安定で、そもそもその根っこが有る足場も、岩肌に堆積した土に過ぎないという不安極まりない状況。
段々と崩壊が進み、ついには最後の梯子は通行不能になってしまった。




やがて途中の足場は完全に崩壊し、その区間はロープに置き換えられたのだが、岩肌には足場が全く無い。
一応木の根っこが有るのだが、これも何時崩壊してもおかしくない訳で、ますます危険になったと言える。




やがて足場が崩壊し、現在では最初の梯子の手前に新たなルートが設置されている。
この新ルートも二連梯子などの割とスリリングな内容だが、これまでのルートに比べれば天国の様な物だ。
林道の荒廃で廃道となった「林道分岐コース」


先ほどの難所を過ぎて暫く行くと、この看板の場所に着く。
(左は過去の写真。右は2025年現在の様子。)
ここはかつて林道(町道祝子川線)へ至る道が分岐しており、二枚ダキコースへ繋がる林道を経て祝子川登山口へ行くことが出来た。
しかし、現在は林道の荒廃が進んだ事により、このルートも廃道となり、案内板の表示も撤去されている。
坊主尾根コース最後の梯子を通過し、祝子川徒渉地点へ

一体何ヶ所の梯子を下ってきたか分からない坊主尾根コースだが、ついに最後の梯子が登場する。
これで最後となると、なんだか寂しい気もして不思議だ。
しかし、そんなフィナーレを飾るべく(?)、この梯子もなかなか手強い。
左右が切れ落ちた長い岩尾根に設置されているこの梯子だが、固定状況があまり宜しくなく、なんと左右に大きく動くのだ。
知らずにうかつに取り付くと怖い目に遭うので注意だ!
最後の梯子を越えて暫く進むと、やがて川のせせらぎと共に、右手の樹林の隙間から渓流が見えてくる。
最初に徒渉した祝子川についに合流したのかと喜びたくなる所だが、実はこの渓流は下小積谷と呼ばれる祝子川の支流である。
祝子川の本流はまだまだ先で、結構な時間歩かされることになる。
疲れもピークになる頃なのでさっさと対岸に徒渉したくなるが、実際の徒渉地点はまだまだ先だ。
下小積谷が現れて間もなく、渓流沿いの大きく開けた場所に出るが、前述の様にここはまだ祝子川の本流では無い。
間違って対岸に徒渉しないように注意しよう。


下小積谷沿いに暫く進むと、いよいよ祝子川本流の徒渉地点に到着する。
とはいえ、ここが徒渉地点であるという目印は特にないので、うっかり通り過ぎないように注意。
湧塚尾根コースへの徒渉地点と同様に、ここも増水する度に地形が変化する。
その都度徒渉に適した場所は変化するので、水量と合わせて渡りやすい場所を見極めよう。
徒渉を終えたら対岸の樹林帯の中に進む。
この際、樹木に付けられたピンクテープを探そう。
河原から樹林帯に入り、縦走路と合流したら長かった坊主尾根コースも終わりだ。
後は共通ルートを通って祝子川登山口へ戻る。
最後の約30分間の行程だが、ここで怪我などしない様に気を引き締めていこう。
坊主尾根コースまとめ
頂上近くの坊主尾根コース分岐点から大崩山荘前の徒渉地点まで、標高差はおよそ800m。
この数字だけを見るとそれほど大きくは無い。
実際、日本アルプスなどには標高差2000mクラスの急登コースが有ったりする。
しかし、実際に坊主尾根コースを歩いてみると、このコースが数字以上に長くて辛く、そして危険に満ちたコースである事がよく分かると思う。
登山において、標高などの数字だけで難易度を判断してはいけないという事を再認識させられるコースだ。
例えば北アルプスの合戦尾根やブナ立尾根の方が標高差は大きいが、坊主尾根コースの方がよっぽど辛く感じる。
そもそも、あちらは難所らしい難所は存在しない。 難所しか存在しない坊主尾根コースとは大違いである。
一方、それらの難所を越えていく事で得られる達成感は大きいのも事実。
また、それらの難所は絶景ポイントになっている事が多く、常に刺激と程良い緊張感に満ちた楽しい尾根歩きが楽しめるコースでもある。
全身を使って難所を乗り越える達成感。 絶景を堪能する事による感動。
ここまで楽しいコースは他にはなかなか存在しないだろう。
大崩山屈指の高難易度コースは、全国屈指の楽しいコースと言えるだろう。
確かに難易度は高いが、それに見合うだけの楽しいコースだ!
十分な体力と装備で挑めば、きっと素晴らしい思い出を作る事が出来るだろう!
■登るのはもちろん、下るのも辛い高難易度のコースだ。
■数え切れない程の梯子・ロープ・難所の数々に圧倒される。
■三点支持の基本技術とヘルメットの着用は必須と言える。
■私は坊主尾根コース以上に楽しく歯応えのあるコースを知らない。あなたも是非!
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