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祖母傾国定公園の名峰「傾山」とは?

「傾山(かたむきやま)」とは、宮崎県と大分県に跨がる標高1605mの山で、祖母傾国定公園に指定されている山の一つである。
中腹より下は概ねなだらかな山容をしているが、上部、特に頂上付近は急峻な岩稜地帯となっており、後傾・本傾・前傾と呼ばれる3つの岩峰から構成されている。
三つも頂上を持つ贅沢な山容・・・北アルプスの爺ヶ岳みたいな物だな!
宮崎側・大分側それぞれから複数の登山道が存在するが、いずれの登山口も山深い場所に有り、基本的に自家用車の利用が推奨される。
また、祖母山など近隣の山を絡めた縦走も楽しめるエリアなので、天候が安定する時期に是非とも挑戦してみよう。
九州の山の面白さを堪能出来ることだろう!
なお、この傾山は日本昔話でお馴染み「吉作落とし」の舞台ともなった山でもある。
吉作さんの無念を晴らすためにも(?)、頑張って登頂しよう。
登山口に辿り着くまでが大変な「九折越コース」
前述の様に傾山には複数の登山コースが有り、それぞれ所要時間や景観が異なる。
祖母山を始め、この付近の山はルートの選択肢が豊富なのが特徴だ。
今回は宮崎県側の「九折越(つづらごし)コース」から登ってみよう。
九折越コースは複数損じする傾山のルートにおいて、最短で登頂可能なコースだ。
コースの主要部分は祖母山方面から連なる縦走コースに含まれる。
頂上付近にロープ場が有るが、大部分は穏やかな地形で快適な稜線歩きが楽しめる良いコースだ。
・・・良いコースなのだが、大きな問題が一つある。
それは、「登山口までの林道が長く、そしてとても荒れている」という点だ。
以下で具体的に説明していこう。
日之影町中心部から県道6号線を見立(みたて)・英国館方面へ


今回は宮崎県側の九折越コースを利用する。
まずは九州中央道・国道218号線・県道237号線などを利用して日之影町まで移動しよう。
五ヶ瀬川と日之影川が合流する付近が最初の目標だ。
ここで分岐する県道6号線を見立・宇目方面へ向かって暫く進もう。

下を流れるのが日之影川、奥に見えるオレンジ色の橋梁は旧高千穂鉄道の橋梁で、そのまた奥に見えるのが国道218号線の橋梁である。
毎年ゴールデンウィーク頃には、ご覧のように川を埋め尽くすように鯉のぼりが設置される。
気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼりに勇気づけられ、オッサンの足取りは軽い。


県道237号線から県道6号線に入り、小一時間ほどひたすら道沿いに進む。
基本的に舗装されているが、全体的に隘路となっているので対向車には注意しよう。
この6号線は大分県の宇目町に有る「道の駅宇目」付近に至る。
大分方面から来る場合は逆側から進む事になるわけだ。
ここからさらに10分程進んだ場所に傾山登山口へ繋がる林道の分岐点が有る。
トイレ・自販機・公衆電話などは一切無いので、必要なら済ませておこう。
また、この付近からユウガヅルを経由して九折越登山口へ繋がるルートも有るらしい。
基本的に登山道を歩くので時間は掛かるが、荒れた林道を通行したくない場合は検討しても良いだろう。
ところで、カーナビの目標に何を設定するかだが、傾山登山口などでは出てこないと思われるので、ここは「英国館」を設定しておこう。
この付近にはかつて「見立鉱山」が有り、イギリス人技師の指導の下で運営されていた。
技師達の宿舎として設立された施設が「英国館」であり、現在では国の有形文化財に指定されているらしい。
長いし荒れている奥村林道・黒仁田林道


英国館からさらに10分程県道6号線を進むと、林道の分岐点が有る。
左へ分岐しているのが「奥村林道」で、さらにその奥に「黒仁田林道」が繋がっている。
この分岐を見落とすと宇目の方へ行ってしまうので要注意だ!

分岐点から林道の方を見ると、隘路ではあるがきちんと舗装されているし、特に問題は無さそうに見える。
・・・見えるでしょ? フフフ・・・恐れを知らぬ若者よ、さあ先に進むが良い・・・
結論から言うと、ここから先はジムニー推奨。
ジムニーがOKならもちろんランクルやパジェロでも良いのだが、隘路なので極力コンパクトな車種が良いだろう。
間違っても車高の低いセダンやクーペで来てはいけない。 マジで後悔するから!
もちろんこの記事を書いている私も激しく後悔した。
そう、もう二度と通りたくないと思ったほどに・・・


奥村林道に入って暫くは舗装路が続くのだが、やがてコンクリート道に変化する。
こ、これは、あの大崩山・宇土内谷コースへの林道と同じパターンか!?
・・・そして程なくして林道は未舗装路へと姿を変える。 やっぱりか!
分岐点から登山口までは約11kmらしいが、路面が非常に荒れているため、常時時速10km程度の低速走行を強いられてしまう。
林道区間は大体30~40分程は見ておいた方が良いだろう。



私のつたない写真では、この林道の 酷さ 魅力を十分にお伝えできないのが歯がゆい。
とにかく路面状況が酷いのだ。
大きめ目の石が大量に露出しており、ゴツゴツ・ボコボコのオンパレード。
私には聞こえる・・・車輪が、車体が悲鳴を上げているのを!!
恐らく最初はここまで荒れていなかったと思う。
長い年月を掛けて、大雨などの際に土や砂が流出し、埋まっていた石が露出したのではないだろうか。
とにかく路面状況が悪く、最悪の場合はパンクする恐れが有る。
正直なところ、このルートを選んだ事を激しく後悔してしまった程だ。
路肩に転がっている石や木の枝にも要注意だ!
いつ落石などが発生してもおかしくない場所であり、特に大雨や低気圧が通過した直後は気をつけよう。


石や岩も厄介だが、雨上がりに出現する巨大な水たまりも厄介だ!
避けて通ろうにも道幅は狭いし岩も転がっている。
下手に避けずに素直に通過して方が良い場合も有りそうだ。
雨上がりは車体が泥まみれになるし、乾燥していれば砂埃でやはり酷い目に遭う。
おまけに凹凸が激しくて車体の底を削るし・・・
この林道を通る限り、車体の傷や汚れは免れない物と覚悟しよう!


時々通過する橋の上は数少ない舗装区間。
心安らぐ癒やしの一時だが、すぐさま現実に引き戻されてしまう。
ふと横を見ると凄まじい量の流木(?)が。
砂防ダムの上から土石流でも流れ込んだのだろうか?


何個目かの小さな橋を渡った先にちょっとした広場が有り、ここに車を停める人が多いようだ。
この日は休日と言う事もあってか、全部で10台ほどの車が来ていた。
どこからか沢の水が流れ込み、道路は水浸しに・・・
こうやって路面の砂や土が流出し、岩が露出した悪路になっていくのだろう。


実は林道はまだ先へ続いており、50m程進んだ所にはそこそこ広い駐車スペースが有る。
居るかは分からないが、マイクロバス等の大型車で来る人はここで転回しておこう。
自家用車で入れるのはここまで。 後は自分の足で登るのだ!


県道6号線からの分岐点から約40分。 ようやく九折越登山口に到着!
どうやらここが黒仁田と呼ばれる場所らしい。
いや~、本当に長かった。 本当に酷い道だった。
神経はすり減るし、車体の底も物理的にすり減るしで、酷い目に遭った。
何が辛いかって、登頂した後に再びこの道を戻らなければならないという、その事実が辛い。
このルートを選んでしまった事を後悔してしまった程に!
この付近では林業が行われているらしく、それが続く限り奥村林道・黒仁田林道も整備され続けるだろう。
ただ、現状以上に整備されるとは考えにくく、今後も路面状況は良くないままだと思われる。
九折越コースは傾山に登頂する最短コースだが、登山口までが長く辛いのが困りものだ。
傷や汚れはもちろん、パンクするリスクも有ることを念頭に置いて検討して欲しい!
奥村林道と黒仁田林道の境は何処にあるのかだが、地図によって微妙に情報が異なっている。
この案内板の有る場所が境界だとする資料もあれば、その手前に有る分岐点(英国館からの登山道が合流する辺り)がそうだとする資料も有る。
凶悪な林道が嘘のように穏やかな九折越コース


前述の様に登山口から先にはまだ林道が続いており、一見まだ車で奥まで入って行けそうにも見える。
しかし、程なくして路面はボコボコになり、さらに倒木や落石なども加わって完全な「廃林道」に!
ここを車両で通りたければ、戦車か装甲車でも持ってくるしか無いだろう。


突然林道は沢に飲み込まれる様に消え失せ、ここからはいよいよ登山道が始まるらしい。
少し痩せた場所を通るので、足下に注意して通行だ!

数分ほど進むと、突然露出した暗渠管を発見!
これを見て全てを察した。
先ほど林道が消え失せたように見えたが、実際はまだ先まで続いていたのだ。
しかし、沢からあふれ出た流水が林道の地面を流出させ、あのような惨状になってしまったのだろう。
この様な地形は大崩山の宇土内谷コース登山口付近でも見かけた。
かつて存在したはずの林道は跡形も無くなっている。
一体どれほどの水があふれ出したのか、全く想像も付かないな。


暗渠管の場所からもう暫く林道は続くが、それもやがて終わり、今度こそ本当に登山道のスタートだ。
駐車場から稜線まではコースタイムで約40分程。勾配も穏やかで難所も無いのでゆっくり行こう。


稜線までの登山道は非常に明瞭で分かりやすく、全体的に穏やかな地形なので気持ちよく歩けるコースだ。
傾山のテープは他の山と同様にピンクが主体だ。
豊富に設置してあるので迷う事は無いだろう。
この付近には貴重な水場が有る。
稜線に出ると水場が無いので、縦走などで必要な人はここで給水していこう。
縦走路と合流する九折越と九折越小屋


森が開けて明るくなってくると、広場の様な場所に到着する。
ここが最初の目的地である「九折越」で、祖母山方面と傾山方面を繋ぐ稜線上に位置する。。
元々開けていたのか、人工的に伐採したのかは分からないが、この場所は非常時のヘリポートに指定されているらしい。


向かって右へ行けば傾山方面、左へ行けば笠松山や本谷山などを経由して祖母山方面だ。
また、登ってきた九折越コースと反対側へ行けば大分方面へ下る「上畑コース」が有る。
大きく開けた場所だけに、九折越コースへの入り口が少々分かりにくい。
下山時に入り口を見落とさないように注意しよう。


広場からは見えにくいが、祖母山方面へ50m程行った場所に「九折越小屋」が有る。
折角なので立ち寄っていこう。




九折越小屋は祖母傾山域を縦走する際に欠かせない小屋だ。
なかなか立派な山小屋だが、一部補修が必要そうな箇所も見受けられる。


九折越小屋の内部の様子。 なかなか綺麗に保たれているな!
屋根裏部屋的な場所は無いが、20人位なら宿泊出来そうな広さだ。
前述の様にこの付近には水場が無い。小屋で宿泊する際は途中で給水していこう。
また、見たところトイレも無いので、携帯トイレなどをお忘れ無く。
難所も無く気持ちよく歩けるセンゲン尾根


登山もここからは中盤戦! 傾山方面へ向かってセンゲン尾根を歩く。
序盤もさほどキツくは無かったと思うが、ここから先も暫くは穏やかな稜線歩きだ。
途中で何度か傾山の頂上付近が見える場所が有る。
一見双耳峰の様に見えるが、実は爺ヶ岳のようにピークは三つあるらしい。
向かって右から「後傾」「本傾」「前傾」と呼ぶらしい。


九折越から暫くは勾配の少ない、実に穏やかな稜線歩きが楽しめる。
登山口までの林道を運転していた時の方がよっぽど苦痛だったくらいだな!
アレに比べるとここは高速道路の様に快適だ!
まあ、後であの道を引き返す事になるわけだがな! ・・・ハァ、憂鬱だ。


近年シカによる食害が問題となっているが、ここ九州においても同様の様だ。
祖母山付近でも見かけた鹿よけのフェンスがここにも設置されていた。
こんな山奥にフェンスを設置するなんて、さぞかし大変な難工事だろう。
工事関係者の方々に敬礼!


再び傾山のピークが見える場所に出ると、この付近からちょくちょくロープ場も出現する。
ただ、難所という程では無く、軽い小手調べ程度だ。
何度も言うが、あの林道に比べれば実に快適だ!
杉ヶ越ルートの分岐点から始まる核心部

九折越からコースタイムで1時間程歩くと、右側から「杉ヶ越コース」が合流してくる。
このコースは長くて梯子場も多く、健脚者向けのコースとして知られる。
ただ、登山口までは舗装路なので、アレに比べれば快適だ。 どちらを取るかは非常に悩ましい。


杉ヶ越コース分岐からはいよいよ終盤戦。
ここから先は急登の連続となり、大きなロープ場も出現する。
傾山の頂上まではあと少し。 気を引き締めて突入だ!

なかなかのロープ場が出現したが、落ち着いて通過すれば問題無い。
ロープに頼りすぎないよう、地形を活用して通過すべし!


個人的に今回のコースで一番の難所だと感じたのがこのロープ場だ。
結構な急斜面にロープが二個設置してあるのだが、ロープとロープの間には距離が有る。
そこをどうやって通過するかが肝となるだろう。
なお、この日は前日に雨が降った事もあり、かなり泥濘んで結構苦労した。
映画「ハンバーガーヒル」で、土砂降りの中、泥濘んだ急斜面をよじ登る米兵のシーンを思い出してしまった。


ロープ場を越えると展望の良い場所に出るが、ここが「後傾」と呼ばれる場所だろう。
直ぐ目の前には三角点の有る「本傾」が有り、寛いでいる人の姿も見える。
頂上はもう目の前だ! 前進あるのみ!


後傾からは本傾周辺の地形がよく見えるが、非常に切り立った険しい地形をしている事が分かる。
この付近だけを見ると、近隣にある大崩山のダキ群にも似た印象を受けるな。
恐らくだが「吉作落とし」の舞台となった絶壁はこの辺に有るのだろう。

うーむ、見れば見るほど恐ろしい絶壁だ。
落ちたらまず助かるまい・・・ 滑落にはくれぐれも注意して欲しい。
吉作さんはこのどこかで・・・ キノコさえ取りに行かなければあんな事には!


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後傾から少し進むと、右側から「冷水コース」が合流してくる。
こちらは大分県側から登るコースだが、途中で別の登山口へのルートが分岐している様だ。


ここまで来れば本傾の頂上は目の前。
長かった(登山道では無く林道が)旅も間もなく折り返し地点を迎える訳だ。
展望は良好だが、左側は切れ落ちているので滑落には注意せよ!


ここでさらに別の「三ツ尾コース」が合流してくる。
これもやはり大分県側からのコースで、「坊主尾根コース」とも呼ばれているらしい。
この様に、頂上付近では複数の登山道が交わっている。
下山時にコースを間違うと悲惨な事になるので注意して欲しい。
まあ、あの林道ほど悲惨な場所はそうそう無いがな!

いよいよ本傾の頂上へ到着!
まるで箱庭の様な美しい場所で、ご覧のように開けていて展望も抜群である。
いや~、辛い林道を突破してきた甲斐が有るってもんですよ!


看板や三角点など、お馴染みの設置物達。
本傾から前傾の方へ少し進むとさらに展望の良い場所に出るので、折角なので行ってみよう。


こちらは祖母山とそこへ繋がる縦走路の様子。
遥か奥には阿蘇山と思われる巨大な山塊も見える。
祖母山へは大きなアップダウンが無い気持ちよさそうな縦走路が続いている。
途中には縦走路へ繋がる登山口へのルートも多いので、細かく繋いで踏破するのも良いだろう。

こちらは九重連山方面だろうか。
遠いようにも思えるし、直ぐ近くにあるようにも感じる。
とにかく360度の大展望だ。 傾山の頂上は展望が素晴らしいね!

後ろを振り返ると、先ほど通った後傾がそびえ立っている。
こうして見ると、後傾もかなり切り立った地形をしている。
滑落したら無事では済むまい・・・ みんなも気をつけてね!

こちらは再び本傾から前傾方面の様子。
やはりこの付近は大崩山のダキ群に似ているな。
あのどこかに吉作さんが居たのだろうか。 吉作さん・・・!
傾山「九折越コース」まとめ
如何だっただろうか? 宮崎県と大分県に跨がる名峰「傾山」の魅力、少しでも伝わったら幸いだ。
今回紹介した九折越コースは、序盤と中盤は難所は無く勾配も控えめ。
後半には多少急なロープ場などは有るが、極端な難所は存在しない。
コースタイムで見ても、傾山に最短で登頂出来るという点は大きな魅力と言えるだろう。
しかし、それらの魅力を帳消しにするのが、例の荒れた林道なのだ・・・!
あの林道さえ無ければ、九折越コースは万人にオススメ出来る名コースだと言うのに!
正直なところ、悪い意味で下山したく無くなった山行は今回が初めてだった気がする。
「またあの林道を通るのか・・・」と、本気で憂鬱になってしまった程だ。
頂上などで同じコースを歩いてきた人達と会話したが、通常であれば「素晴らしい天気ですね!」とか「展望良いですね!」など、ポジティブな話題で盛り上がるところだ。
しかし、今回に限っては「酷い林道でしたね!」と、林道の話題がほとんどを占めていたような気がする。(笑
次回もこのコースで登りたいかと問われると、非常に悩ましい。
というか、なるべくなら通りたくない。
少々ロングコースとなるが、今度は杉ヶ越コース辺りから登ってみようかと思う。
歯応えがあって楽しそうだ。
もしこれから傾山に登ろうと思っている方が居たら、コース選択はくれぐれも慎重に!
もちろん、敢えて悪路に挑むのも自由だ。 ただ、可能ならジムニーがベターというかマストだ!







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