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穂高連峰~槍ヶ岳縦走・最期の区間は3000m級の稜線歩き

穂高連峰から槍ヶ岳への縦走をテーマにした当コーナー。
この区間を下記のように大きく三つに分けて紹介してきた。
(1)涸沢岳 ~ 北穂高岳
(2)北穂高岳 ~ 南岳(南岳小屋)
(3)南岳 ~ 槍ヶ岳(槍ヶ岳山荘)
今回はいよいよ最後の「(3)南岳 ~ 槍ヶ岳(槍ヶ岳山荘)」である。
(1)と(2)の区間には大キレット等、北アルプス有数の難所が存在した。
うっかり滑落などしようものなら、冗談抜きに死んでしまうような難所の連続だったわけだ。
しかし、今回ご紹介する(3)の区間には際だった難所は存在しない。
一応注意を要する場所は2箇所ほど有るが、これまでに踏破してきた区間等に比べれば易しい。
しかし、今回の区間は全体的に標高が三千メートル前後も有り、日本屈指の高所縦走ルートとなっている。
当然ながら空気は薄いし紫外線も強烈で、相応にアップダウンも有って地味に疲れる。
また、樹林帯は全く存在しないので、悪天候に遭遇した際には逃げ場も無い。
派手な難所は無いが、決して油断出来るルートでは無いのだ。
一方、標高が高く開けているので展望は最高で、天候に恵まれれば最高の稜線歩きが楽しめるだろう。
また、三千メートルを越える高峰がズラリと並んでいるので、「百高山ハンター」には絶対見逃せないルートでもある。
しっかりと準備をして、快適な稜線歩きを堪能しよう!

前回お世話になった南岳小屋からスタート。
ここから槍ヶ岳山荘まではコースタイムでおよそ3時間である。
途中には避難小屋を含めて山小屋は無いので、ここでしっかりと準備をして行こう。
また、前述の様に途中で悪天候に遭遇したら大変な事になる。
場合によってはここで待機するか、途中の天狗原コースから下山する事も検討しよう。

南岳小屋から20分程度で「南岳(みなみだけ・3033m)」に到着。
なんでも「槍ヶ岳から伸びる尾根の南端に有るから」というのが名前の由来らしい。
ということは、大きく窪んだ大キレットが尾根の終点という事なのですな。

南岳は標高が高いので、当然ながら展望も素晴らしい。
南の方角には先ほどお世話になった南岳小屋や穂高連峰の山々がよく見える。


南東の方角には前穂高岳や屏風岩が有り、独特の尾根の形状がよく分かる。
遥か遠くには梓川と横尾山荘まで見えるぞ!
横尾山荘はお風呂まで備えた大きくて快適な山小屋なので、槍・穂高エリアへ行く際は前泊・後泊にオススメだ。

南に見えるのは常念山脈の最高峰である大天井岳だ。
「常念山脈」だけに知名度は常念岳の方が有名だが、標高自体は大天井岳の方が高かったりする。
この区間唯一のエスケープルート「天狗原コース」への分岐


前述の様に、南岳から槍ヶ岳までの区間は三千メートル級の稜線であり、悪天候に遭遇するととても辛い。
そんな時にエスケープルートとして使えるのが天狗原コースだ。
南岳の山頂から20分程進むと右手に分岐が有り、ここから槍沢ルート方面へ行ける。
コースタイムは下りが約2時間、登りが約3時間となっている。
このルートの由来でもある天狗原には氷河公園と呼ばれる場所が有り、通称「天狗池」に映り込む槍ヶ岳は非常に幻想的で美しいと評判だ。
この天狗池は雪渓などの雪解け水によって作られる。
毎年大体7月下旬以降に姿を現すので、見に行く際は山小屋などに状況を問い合わせると良いだろう。

ご覧の通り、この稜線ルートにはハイマツなどを除いて全く樹木が存在しない。
最高の展望が楽しめる反面、強烈な紫外線が容赦なく照りつけるので、帽子や日焼け止めなどの対策は必須だ!
「日焼けって何か健康的で良いよね♪」などと侮ってはいけない!
日焼け対策を怠ると、後日必ず後悔するぞ・・・ そう、このオッサンのようにな!


振り返ると南岳の勇姿が見える。
大キレット方面から来た時は目の前に聳える断崖絶壁をよじ登る事に必死で、あまり南岳という山の姿を意識することが無かったが、こちらから見ると相応に見応えの有る山容をしていますな。
それもそのはず、南岳も標高三千メートルを超える堂々たる高峰なのだからね!(標高3033m)





滑落注意! 中岳付近の注意箇所である岩場


南岳から槍ヶ岳までの区間は標高が高い事も有り、樹林帯は全く無く、沢や池なども無い。
特に中岳の周辺は殺風景な岩稜地帯となっており、ある意味で北アルプスらしい風景とも言える。
この岩がゴロゴロとした感じ・・・ まるで月面のようだ。行った事は無いがな!
南アルプスの悪沢岳(荒川東岳)の頂上付近に少し似ている気がする。

先ほど「この区間には2箇所ほど注意を要する場所が有る」と書いたが、その一つがここだ。
岩場の急斜面を下るのだが、進行方向だけではなく横方向も急斜面となっている。
岩の窪みや隙間を手がかり・足がかりにして通過する事になる。 結構緊張するぞ!


この場所は結構危険な地形をしているが、特に鎖などは設置されていない。(現在は不明だが)
偶然の産物である岩の隙間を活用して通過すべし。
なお、こういう場所でストックを持ったまま移動すると大変危険だ。
高さが結構ある上にご覧の通り硬い岩場なので、万が一滑落したら大怪我は免れないだろう。
面倒でも一旦就農してから通過しよう。


いやほんと絵に描いたような岩稜地帯ですこと!
僅かにハイマツなどが生えている以外は何も無い。 岩稜フェチには堪らない場所ですな。
岩稜地帯独特の景観は実に美しいが、浮き石を踏んで転倒しないように注意だ!


右奥に見えるのは槍ヶ岳、向かって左側に大喰岳、中岳と続く。
分かりやすく尖っている槍ヶ岳と中岳に対し、大喰岳は横に平たい形状をしていて対照的だ。
この様に晴天時であれば道を見失う事はまず無いが、日没後や悪天候時だと、うっかりコースを外れてしまいそうだ。
間違った尾根に入り込んで遭難した事例は多数有るので注意しよう。
中岳への急登と点在する野営の跡地

中岳がほど近くなった頃、ふと右手の方に整地されたと思われる場所を発見。
この付近は大小の岩が転がる典型的なガレ場なのだが、その中に2mx1m程の窪みが有るのだ。
明らかに不自然! どうみても自然に出来た地形では無い!
こ、これは所謂「闇テン」の跡では?
日本アルプスは全域が国立公園に指定されているので、指定場所以外のテント泊は禁止されている。
この様な違法な野営の事を「闇テント(闇テン)」と言う。

うーむ、どう見ても人工的に整地されており、しかも1箇所だけでは無く複数確認できる。
国立公園内でも悪天候などを避ける為の緊急の野営(ビバーク)は例外的に認められている。
しかし、ここまで綺麗に、しかも複数整地してある事から、計画的に野営している事は間違い無いな。


さて、南岳の次は中岳への登りとなる。この場所から中岳頂上への標高差は大体100m程度だろうか?
強烈な陽差しの元でのガレ場の急登なので、数字以上にキツかった気がする。
なお、この付近には東側(向かって右)に廃道となった旧ルートが有る。
現在でも踏み跡が見えるため、うっかり迷い込まないように注意だ!

ぐおおお! なかなかキツい急登だ!
穂高岳山荘から一気に歩いてきた場合、難所続きで疲れている所にこの急登! 手強いぞ!
さっきも書いたが、右の方に廃ルートが有るので迷い込むなよ!

ぬううぅうう! ここにも闇テンの痕跡を発見!
緊急のビバークならここまで丁寧に整地する余裕なんて無いし、どう見ても日常的に使用されているな。

この付近での闇テンは自治体や遭対協でも把握しているのだろう。
あちこちにキャンプ禁止を伝える看板やペンキを見かけた。
確かにこんな大自然に囲まれた場所で野営できたら楽しいだろうが・・・
ルールを守って自然も守る! 良い子とオッサンの約束だ!

ゼェハァ・・・ ガレ場・急登・薄い空気と強烈な陽差し・・・ 3hitコンボでオッサンも疲労困憊である。
しかし、疲労のあまり俯いてばかりだとルートを見誤ることが多いので注意だ!
足下だけを見て歩くと何時の間にかコースを外れてしまう事が有る。
時々遠くも見て、これから進むべきコースがどうなっているのかをイメージしながら歩く、これが大事だ。
「目先のことだけに捕らわれていては大局を見失う。これは登山にも人生にも共通する教訓である。」
等と意味不明なことを呟きながらオッサンは急勾配を登り続けるのであった。

この稜線は常念山脈と併走しており、右手の方には常に大天井岳や常念岳が見えている。
常念山脈は展望良好で山小屋やエスケープルートも豊富であり、オススメの縦走コースだ。

ガレ場の斜面をヒイコラ登り、いよいよ中岳の頂上が見えて来た。
いやぁ疲れたね! この荒涼とした岩の世界。 少し前穂高岳に似ている気がする。


この区間の文字通り中間地点である「中岳(なかだけ・3084m)」に到着!
なにやら看板がたくさん設置されていて賑やかですな。
前方に見えるのは大喰岳と槍ヶ岳だ。
残す3000m峰も残り僅か。 休息がてら絶景を堪能しておこう。

山と山に挟まれた、その中間に位置する山のことを「中岳」と呼ぶ事が多い。
例えば九州の霧島連山や阿蘇山、本州の八ヶ岳連峰や北アルプス、中央アルプス、南アルプス等に「中岳」が存在する。
いずれも上記の様な立地であり、文字通り中央に位置する山である。
そして多くの場合、左右に有る山のほうが有名で、中岳は地味な存在である事が多い。
この北アルプスの中岳も標高だけなら堂々たる高峰なのだが、存在としては地味だ。

中岳まで来れば槍ヶ岳は目と鼻の先・・・
距離だけ見ればそうなのだが、ご覧の通り一旦大きく下ってから登り返すことになる。
南アルプスの荒川中岳から悪沢岳へのルートに似ているな。
あっちの方が鞍部からの登りが急勾配でキツいが、いずれにしても終盤の急登は堪えますな。


こちらはこれまで歩いてきた南岳~穂高連峰方面の展望だ。
森林限界の上に広がる岩だらけの稜線は一見寂しげだが、独特の美しさが有って魅力的である。

西の方に見えるのはお馴染み笠ヶ岳。 あの麓には新穂高温泉が有る。
山に入って数日・・・温泉に入ってビールを飲みたいです。





南岳の頂上直下に有る梯子場を通過せよ!


先ほどこのルートには2箇所の注意箇所が有ると書いたが、二つ目はこの梯子場だ。
この区間に有る数少ない梯子場は、ここ南岳の頂上直下に有る。


梯子が設置されているだけあって、ここは垂直に近い傾斜であり、梯子無しではまず通れない。
高さも有り恐怖を感じるかも知れないが、梯子は頑丈なので三点確保で確実に通過だ!
上から梯子に取り付く際、足下の石を落とさないように注意せよ!

地形といい梯子といい、いかにも槍・穂高エリアといった感じの梯子場である。
この風景を見ると何故か安心するのは私だけだろうか。
この二段梯子も結構な高さだが、頑丈な物なのでまず壊れること無い。
後は登山者自身の技術と心構え次第だ! 三点確保で突破せよ!


梯子場を無事に突破したら、鞍部まで下ってから大喰岳へ登り返す。
このアップダウンが疲れるが、傾斜はそこまでキツくない。 ゴールまであと少し! 頑張ろう。

こちらは立った今通過した中岳の様子だ。
頂上直下はかなりの絶壁になっており、梯子場が無かったらまず登れないだろう。
中岳もまた険しい岩稜の山だが、この岩稜地帯が独特の美しさを作り出している。


足下には「ヤリ→1100」等と書かれたペイントが!
言うまでも無く槍ヶ岳までの距離を意味する数字である。
「これが水平距離じゃなくて標高差だったらヤバイよね~ ナハハハハ!」
等と1人ハイテンションになって陽気なオッサンであった。

強烈な紫外線や天候にさらされる3000m級の稜線だが、僅かながらも植物が自生している。
そして、この植物を住処や糧とする雷鳥などの小動物も存在する。
自然の動植物というのはなんと逞しいのだろうか。
軟弱なオッサンよりもよっぽど逞しいぞ。 オッサンも負けてられないな!


勾配を登り切ると、これまた荒涼とした岩稜地帯の風景が広がる。
前穂高岳や悪沢岳などによく似た景観で、荒々しさの中に独特の魅力が有りますな。

いよいよ「大喰岳(おおばみだけ・3101m)」に到着!
3101mという標高は国内でもトップクラスであり、高山ハンターなら見逃せない高峰だ。
ご覧の通り槍ヶ岳からは目と鼻の先なので、槍ヶ岳に来たならば併せて登っておこう。

最終目的とも言える槍ヶ岳はもう目の前だ。
槍ヶ岳は山深い場所に有る上に標高も高く、近くから観察するのは意外と難しい。
ここ大喰岳は位置・標高共に槍ヶ岳に近く、槍ヶ岳の展望スポットとして好適な場所に有る。
槍ヶ岳山荘からも近いので是非行ってみて欲しい。

これまで歩いてきた穂高連峰方面の稜線を振り返る。
ここまで3000m級の山が連なる稜線は国内でもほとんど無い。
他は南アルプスの白峰三山エリアや赤石・荒川エリアくらいだろうか。
いずれも登山口からの距離が長くて大変だが、訪れる価値は有る。
是非ともプランを練って行って欲しい。


ここにもキャンプ禁止の立て札が有り、野営したであろう痕跡も点在していた。
しかし、ここまで来れば槍ヶ岳山荘のテント場は目との鼻の先である。
わざわざここで闇テンをする意味って何なんだ?
槍ヶ岳山荘のテント場は狭くて争奪戦が厳しいしから?
理由は不明だが、ルールは守ろうね。
飛騨乗越を越えて槍ヶ岳山荘へ

大喰岳からの展望を楽しんだら、いよいよ今回のルートの最終区間である。
ここから槍ヶ岳山荘までは既に1kmも無い。最後だからこそ油断せずに踏破すべし!


大喰岳と槍ヶ岳の間に有る鞍部は「飛騨乗越」と言う。
ここから向かって左の方へ分岐しているルートは飛騨沢沿いに新穂高温泉まで繋がっている。
ご覧のように稜線付近はかなりの急勾配なので、登り・下り共に慌てずゆっくり歩こう。

飛騨乗越から新穂高温泉へ下るルートの向こうに見えるのが「西鎌尾根」だ。
あの上を通るルートが有名な「裏銀座コース」である。
ここからでも分かる、あの急登・・・ まさに縦走のクライマックスに相応しいですな!

西鎌尾根の奥に広がるのは、裏銀座コースをはじめとした北アルプス北部の山々だ。
黒部五郎岳や鷲羽岳など、北アルプスを代表する名峰が一望できる。
多数の名峰を様々なコースが結び、山小屋も豊富。
是非とも数日掛けた大縦走で堪能して欲しい、とても魅力的なエリアだ。

飛騨乗越は槍・穂高エリアと新穂高温泉方面へのルートが分岐する場所なので、いつも多くの登山者で賑わっている。
みなそれぞれの目的地へ向かって楽しそうに歩いているのが印象的だった。
ある人はこれから大キレットを越えて穂高岳山荘へ向かうとの事。
別の人は新穂高温泉方面へ下り、今夜は平湯温泉で一泊するらしい。
この一期一会の短い交流も良いもんですな~

飛騨乗越からは槍ヶ岳山荘へ向かって最後の登りなのだが・・・
この登りが地味にキツい。 縦走してきて疲労も溜まっているが、傾斜も結構厳しいぞ!
ゼェハァ・・・ ラストスパートだ頑張れオッサン!


ハァハァ・・・ なんとか急登を登りきったオッサンであった。
ここから奥穂高岳まで9kmか。
距離だけを見ると短いが、険しい地形と気象がそう簡単には歩かせてくれないわけですな。

急登の途中から槍ヶ岳山荘が管理するテント場が始まり、それを越えると槍ヶ岳山荘の裏手(?)に出る。
ここのテント場は展望が素晴らしいが、訪れる人に対して規模が小さすぎる。
特に週末祝祭日などは、少なくとも午前中に来ないとまず満員で利用できないだろう。
空きが無かった場合は少し下った場所に有る殺生小屋(旧:殺生ヒュッテ)のテント場がオススメだ。
槍・穂高エリアの稜線縦走を終えて
穂高連峰から槍ヶ岳に至る、3000mを越える稜線の大縦走。
これまで三回に分けてご紹介してきたが、今回を持って無事に終了である。
南岳~槍ヶ岳までの区間には際だった難所は無く、快適な稜線歩きを堪能出来る。
国内有数の高峰に複数登頂出来るので満足感も高いだろう。
この区間には北アルプス有数の難所も有り、標高が高い事による気象の厳しさも有る。
初心者が迂闊に訪れる事はできないエリアである事は間違い無い。
一方、こういった場所でしか味わえない絶景、踏破した際の達成感は格別だ。
特に北穂高岳の頂上から見下ろす大キレットの絶景は一生物の思い出になるだろう。
しっかりと経験を積み、確かなプランを練って是非ともチャレンジしてみて欲しい!



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